恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「紹介する必要がどこに? 元帥が勝手に調べている事くらい容易に察しがつきますし……。
それ以前に、元帥とは面識があるかと」
「……」
「元帥にお伝え下さい。クズはクズらしく、目立たないように生きていくので心配しないように、と。
もちろん、ヴァンパイア界にも迷惑はかけません。
……代わりに、俺の生活にも支障をきたすな、と」
「行こう、くるみ」そう言った藍川が、あたしの肩をぐいっと抱いて歩き出す。
「え、あ……」
あたしは藍川に連れられるように歩くしかできなくて。
挨拶運動の事も気になったけど、時計を見ればもう8時半。
とっくに運動時間は過ぎていて、それどころか急がなくちゃ遅刻扱いになりそうだった。
校舎に入る直前、一度だけ振り返ったけど……。
杏子さんの姿はもうなかった。