恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「杏子さんは、なんであたしにこんな話をしてくれたんですか?」


きっと、人間のあたしが知っていい事じゃないハズなのに。


それに、杏子さんはあたしをあまりよくは思ってない。

それが眼差しとか言葉尻に感じられるのに、なのになんで、こんな親切に答えてくれるんだろう。

なんで、こんな簡単に教えてくれたんだろう……。


じっと見つめながら聞くと、杏子さんは目を伏せる。


「あなたを巻き込めば、紫貴様も黙って見てられないでしょう?

……それに、そもそもの事の始まりは、あなたの行動が原因でもあるんだから」

「原因って―――……」


すぐさま聞き返そうとした時、突然杏子さんが膝をついた。


片膝をついて片手を胸に当てて頭を下げる。

敬意を示すように。




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