恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


いつもはひたすら甘く響く藍川の声が、今は違って聞こえる。

それは杏子さんも同じだったみたいで、明らかに顔色を変えていた。


青くも見える顔色が心配になって、口を開こうとして……。

だけど、隣にいる藍川があたしを隠すように前に立つから、何も言わずに唇を噛んだ。


「……分かりました。伝えます。

ところで紫貴様。顔色が優れないようにお見受けできますが」


チラっと視線だけを上げた杏子さんに、藍川は無表情のまま答える。


「何が言いたい?」

「……最後に人間の血を吸ったのはいつですか? 元帥様がもしも武力行使に出た場合も考えておいた方がよろしいかと」


武力行使……?!

歴史の教科書でしか出てこないような言葉が突然出てきて戸惑ったけど、そんなあたしとは反対に、藍川は余裕に笑う。





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