恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「そんな脅しがきくとでも?」
「あくまで可能性の話です。……その娘を傍に置きたいのなら、逆風に備えておく必要がおありかと。
私は、元帥様からのお言葉を伝えに上がったまでです。
……ですが、紫貴様の心の拠り所がある事を、とても嬉しく思っています。
それが人間だろうと、関係ないとも思っています。
だから、もう二度と、あんな悲劇は……」
そこまで言った杏子さんが、表情を歪めてから立ち上がる。
そして、にこっと微笑んでから自分の首を指差して藍川を見た。
「私のでよろしければ今すぐにでも差し上げますが」
びっくりしすぎて、言葉を失った。
私のって……血をって意味だよね?
藍川が、杏子さんの血を……?
一瞬、その光景を想像してしまって、面白くない気持ちになる。