恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「……2人して睨みつけるのはやめて頂けないかしら。ほんの冗談です」


杏子さんに言われて見上げてみれば、藍川も杏子さんをきつく睨みつけていて。

藍川にその気がないって分かってほっとする。


「出すぎた真似をしてしまったようで、申し訳ありませんでした。

元帥様からの伝言だけ気に留めておいて頂くよう、お願いします」


杏子さんは深く頭を下げた後、校舎を後にした。


その後ろ姿を目で追っていて、先生に見つかったりしないか不安になったけど……。

表情を強張らせたままの藍川が気になって、戸惑いながら藍川の腕に触れた。


「……大丈夫?」


覗き込むようにして聞くと、藍川は視線をあたしに落とす。


そして、口許だけを少し緩めて頷いた。



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