恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「ああ。くるみが購買から真っ直ぐに教室に戻ってくれば、もっと大丈夫だったけど」
「だって……杏子さんがいたから、つい……。
それに、あたしが聞いたのに藍川が誤魔化すからでしょ。
……もう、何でも話してくれると思ってたのに、隠すから」
悲しい気持ちになりながら言うと、意外にも沈んだ声が返ってくる。
「……悪い。話さなかったのは、くるみを巻き込みたくなかったからだ。
俺の事なら、もう隠すつもりはない。だけど、ヴァンパイア界の事ってなると、色々な危険も生まれてくるから。
もう、巻き込みたくないんだ。くるみだけは」
つらそうにも見える微笑みが、胸をきゅっと苦しくさせる。
『もう、巻き込みたくない』って事は、あたしは一度何かに巻き込まれてるって事なのかな。
記憶を失う前に……。