恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「でも、本当になんで急に……」
「―――桃井をどうにかしようなんて考えるからだろ」
不自然な出来事に顔をしかめると、突然上から声が落ちてきて。
驚いて反射的に見上げる。
そこにはあたしを見下ろしている藍川がいて、あまりの近さに身体がすくんだ。
「あ、藍川……」
それだけしか言えないでいると、じっと見つめられてから眉をしかめられる。
「また唇噛んでる」
「え、」
「昨日も言ったろ。気をつけろよ」
「……なんで? あたしが口噛んでたって何してたって関係ないじゃん」
「血でも滲ませられると困るから」
血を滲ませると困るって……、なんで?
疑問に思って顔をしかめると、呆れ顔で微笑んだ藍川の指が、突然唇に触れて―――……。
「な、なに……っ?」
びっくりして聞くと、藍川は人差し指であたしの顎を持ちながら、親指で唇を横になぞった。
あまりの事に身体を震わせても、藍川は何でもないように続ける。