恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「俺の母親は、人間だった。
俺もそんなに覚えてるわけじゃないけど……、いつも自分の気持ちに真っ直ぐな人だった。
母さんが亡くなったのは俺が10歳の頃で、父さんはそんな母さんを追って……自ら命を絶った」
それは、思っていた以上に衝撃的な話だった。
藍川の両親が亡くなっているって事は知ってたけど、だけどお父さんが自殺だったなんて……。
何も言えずにいると、藍川が続ける。
「それはヴァンパイア界にとっても衝撃的な事件だった。
王家の血を直接受け継いでいる、唯一のヴァンパイアである父さんが自殺したんだから、それも無理もないけど。
ヴァンパイア界にはいくつか階級があって、それをまとめられる力を持っているのが王家の血だった。
王家の血を受け継ぐヴァンパイアがいるからこそ、均衡が守られていたのに……その位置にいた父さんが急に死んで。
後任者に選ばれたのは、俺だった」