恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「まぁ、父さんは自ら命を絶たなくても、自然とそうなっただろうから仕方ないんだけど」
ぽつりと言われた言葉の意味が分からなくて、藍川に聞き返す。
「どういう意味?」
「俺達はヴァンパイアだけど、血ばかりを飲んで生きてるわけじゃない。
食生活は人間と同じで問題ない。……だけど、血も必要な事は変わらない」
「……うん」
「母さんが死んで、父さんは血を吸わなくなった。
正確には、吸えなくなったんだろうけど」
「なんで……? 精神的なショックとかで?」
大切な人を亡くしたりしたら、人間だって食欲だとか普通に湧いてくるハズの欲がなくなる。
あたしだって……、両親が亡くなった時は、食事を取ったかどうか忘れるくらい生活全部に無関心になるほどだったし。
藍川は「それに近いな」と、少しだけ微笑んでから続けた。