恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
それを聞いた藍川の目許が、わずかに歪められる。
少し、びっくりしてるみたいだった。
「そんな事を心配したのか」
「……だって、杏子さんがあんな事言うから」
「ばかだな」なんて笑う藍川に、むっとしたまま言う。
「ばかでもなんでもいいから。……藍川があたし以外を必要とするのは嫌なの。
血でも……他の事でも。あたしだけを必要として欲しい……ずっと」
「くるみ以外を必要とした事なんて、ただの一度もない」
「……だったら、戸惑う必要もないでしょ」
真っ直ぐな瞳に捕らえられて、胸がドキンと跳ねる。
それでもなんとか言うと、藍川はあたしの頬に手を伸ばして触れた。
「くるみ。言ってる意味が分かってるのか?」
「分かってる。……分かってるし、本気だよ。軽い気持ちでなんか言えない……」