恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「気をつけろ」
そしてそれだけ言うと、あたしを追い越してスタスタと歩き出す。
「あ、藍川……っ」
思わずその背中を呼び止めると、藍川は身体半分だけ振り返ってあたしを見た。
いつも見ているハズの紫色の瞳が、なぜだか違って見えた。
それは……、さっきの映像のせい?
「前に、……ずっと前に、どこかで会った事ない……?」
我ながら、なんて発言だと思う。
昔々のナンパ男が使ってそうなセリフ。
だけど、素直に感じた事。
さっきの映像の相手が誰なのか、はっきり思い出せない。
だけど……、だけど、もしかしたら―――……。
真面目に聞いたあたしを、藍川がじっと見つめる。
その表情は少しの驚きを示しているように感じたけど……。
藍川は、それを隠すようにすぐに小さく笑って顔を逸らした。