恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
注射とは違う、もっと広い範囲の痛み。
だけどそれは最初だけで、和らいでいく痛みにぎゅっと瞑っていた目を開ける。
目の前には、藍川の肩と髪があって、それがゆらゆら揺れていく。
「……っ、……ん」
なんだろう。視界が歪む。
牙が立てられている首筋はまだかすかに痛むけど、それよりもふわふわとした気分があたしを包んでいた。
意識が遠ざかるような、変な気分。
「……!」
だけどそんな気分も、耳元でしたゴクリという喉の音に我に返る。
今、あたしは間違いなく藍川に血を飲まれてるんだ。
思ったより痛みはないけど、でも確かに……。