恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
【第十章】
「ちょ……、もう大丈夫だってば!」
「いいからちょっとは大人しくしてろ」
言われて、キっと藍川を睨む。
藍川は、あたしの首についた咬み痕に丁寧に舌を這わせていて……。
とっくに5時間目が始まっている静かな校舎に、藍川の舌が這わされる音と自分の心臓の音だけがやけに誇張されてる。
ハンパない恥ずかしさがあたしを襲っていた。
「も、いいから……!」
「人間の唾液には消毒の効果があるっていうのは、くるみでも知っているだろ?
ヴァンパイアの唾液も同じだ」
「別に、そういう事を言ってるんじゃなくてっ! ……普通に恥ずかしいじゃん。こんなの……」
思わず唇を噛むと、それに気付いた藍川が、やっと埋めていた顔を上げた。
そして、微笑んであたしの唇に指先で触れる。
「また噛んでる」
「……藍川が止めてくれないからでしょ」
「こっちにも消毒が必要? さっき、だいぶ長くしたつもりだったけど」