恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
嬉しさを隠すように、わざとそっけない態度を取る。
藍川は微笑んだまま、手に取ったあたしの髪に唇を寄せた。
「必要ない」
「必要ないって……、だって、結婚とか思われてたら、なんか……っ」
「勝手に思わせとけばいい」
なんだ、そういう事か。と、納得半分……がっかり半分でいると、藍川が続ける。
「俺がこんなにもくるみに執着してるって事は、誰が見たってそう思うだろうし、俺自身、くるみ以外は考えられない」
藍川が、またしてもさくっとそんな事を言い切ったりするから、瞬間的に言葉が奪われる。
涼しげな微笑みを、信じられない思いで見つめながら口を開いた。
「っていうか、だって、高校生じゃんっ」
「別に今すぐに、なんて思ってない。いずれはって話だろ」
「だとしても……っ、こんな風に簡単に決めちゃうなんて、」
「簡単じゃない。俺の一生に関る決断を安易に決めたと思われるのは心外だな」