恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
ああ言えばこう返されて。……っていう言葉はちょっと違うのかな。
あたしが言った言葉よりも、藍川の言っている言葉の方が正しいように感じてしまって、続く言葉が出てこない。
必死に頭を働かせて……、やっと出てきたのは、自分でも呆れるようなモノだった。
「だって結婚って、まだ恋人らしい事だって全然してないのに……なんていうか、甘い時間っていうか、……。
今、あたしをバカだと思ってるでしょ」
「いや」
「だって、あたしだって思ったもん。甘い時間とかバカみたいって。けどっ」
「思ってない」
「嘘ばっかり」
そう言って膨れると、藍川は優しく細めた瞳であたしを見つめる。
「くるみは、俺にとってはいつでも甘い存在だけど」
耳からとけそうになるのを必死に食い留まって、口を尖らせた。
「……甘すぎるよ」
「望んだのはおまえだろ」
藍川が笑った。