恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「やだなー、会長。
俺、会長の彼女だって分かってて手出したりしませんよー。
っていうか、こないだっから気付いてましたし。
俺の前でいちゃいちゃしちゃって、あれで気付かない鈍感なヤツなんていませんって」
「いちゃいちゃって何してたの?! 例のキスの噂本当なの?!」とかなんとか、また会計係が騒ぎ出すから、口を尖らせて藍川を見た。
「そんな目で見られる理由もないけど」みたいな視線を返されて、むっとしたまま言う。
「わざとでしょ、今の」
「さぁ」
向けられる、余裕の笑み。
微笑まれて、顔が熱くなるのが分かった。
藍川は、最初から気持ちには素直だったけど、でも、こんな風にあからさまではなかったのに。
いつも、どこかでそれを止めて隠してたのに。