恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
藍川が触れた唇にそっと触れてみる。
ひどく冷たい指先の感触が、今もリアルに残っていた。
昨日触れた腕に、今触れられた唇。
昨日思い出しそうになった何かに、今頭をよぎった映像。
藍川の事ばかりで、頭がいっぱいだった。
あのデジャヴに思えた映像は、なんだったんだろう。
いつか見た夢?
……違う。違う。あれは、確かに誰かに言われて……。
そう思うのに、肝心な事が思い出せない。
昨日からこんなのばっかりで嫌になってぐっと唇を噛む。
『また唇噛んでる』
自然と頭の中に藍川の事が聞こえてきて……、藍川の背中を見つめた。
なんでこんなにも藍川の事が気になるんだろう……。
なんで、こんなに―――……。
何かイケナイ悪戯でもした後みたいに、心臓が音を立てていた。
……藍川だけに反応して。