恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「初めまして。私はヴァンパイア界の元帥、霧島緑(きりしまろく)と申します」

「……初めまして。桃井くるみです」


手を差し出されて、それをとろうとすると藍川に止められる。

あたしの手を握った藍川を見て、霧島さんは困り顔で笑った。


「紫貴さまの大切な方に危害を加えるつもりはありません」

「さっきからどの口で言ってるんですか? 一年前に危害を加えたのはどこの誰です?」


いつもクールな藍川の表情に、怒りが混じる。

霧島さんを捉えた紫色の瞳が冷酷に光る。


ぞっとする。

そんな表現が正しいのかもしれない。


その証拠に、藍川に睨まれた霧島さんは息を飲んで動きを封じられたみたいに微動だにしなかった。


だけど……。

あたしには今の藍川が怖いというよりは、つらそうに見えて仕方なかった。



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