恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
険しく表情を歪めるほどのつらい苦しみに、一人で耐えているように見えて……。
放っとけなくなって、思わず藍川の頬に手を伸ばした。
冷たい頬に触れると、驚いた表情をした藍川があたしを見る。
「どうした?」
「藍川がつらそうに見えたから、触りたくなって」
素直に告げると、藍川はバツが悪そうに顔を歪めた。
まるで『何を言ってるんだ』って言ってるようにも思える表情に、口を尖らせる。
「だってしょうがないでしょ。藍川の怒った顔は、寂しいとかつらいとか、そういう風に見えるんだもん。
そんな顔されちゃったら放っておけないし、何かできる事をしたくなるでしょ」
「……お人好し」
「相手が藍川だから! ……藍川だから、気になって入り込みたくなるんだよ。一人でいさせたくないんだよ」
「何回言わせるの?」と聞きながら不貞腐れると、藍川は困ったように笑みを零して。
それを見ていた霧島さんは、苦笑いをする。