恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
【第十一章】
おじさんが、紫色した瞳を持つ男の子を連れてきたのは、小学校低学年の頃だった。
『くるみちゃん。藍川紫貴くんだ。
今日から私達の家族だよ』
あたしに、というよりは周り全部にまったく興味なさそうに目を伏せた男の子。
その子が、どんな経緯でおじさんに引き取られる事になったのかは説明されなかったけど、特に聞こうとも思わなかった。
自分が両親を事故で失っているだけに、あまり気軽に聞いちゃいけない気がして。
『紫貴くん。あたし、桃井くるみ。よろしくね』
あたしの自己紹介に、紫貴くんはチラッと視線を向けて、またすぐに目を逸らした。
『ねぇ、紫貴くんは何の教科が好き?』
『今日ね、同じクラスの斉藤くんがね、給食当番サボったの。だから怒ったのに、“鬼桃”って。ひどくない?』
『また学級委員にされちゃった……。
でも、やるからにはちゃんとやらなくちゃだよね。……うん。頑張ろっ』