恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
毎日部屋まで押しかけて話しかけても、紫貴くんからの返事は、『ふーん』とか『へぇ』とか。
聞いていてくれても何も返事してくれない日もあるから、そんな言葉でも答えてくれるだけいいのかもしれないけど。
それでも部屋に行くことをやめなかった。
おじさんにもおばさんにも心を開こうとしない紫貴くん。
あたしが諦めたら、紫貴くんは本当にこの家でひとりぼっちになっちゃう気がしたから。
だから、紫貴くんがどんなに無反応でも、毎日話しかけた。
いつか紫貴くんが笑いかけてくれる事を願いながら。
そんな事を続けて2ヶ月が経った頃、紫貴くんは突然険しい顔してあたしを睨んだ。
『おまえ、俺に話しかけて何がしたいんだよ』
『何って、話がしたいんだよ。
血は繋がってないけど家族だもん。仲良くしたいって思ったっていいでしょ?』
紫貴くんはあたしをじっと見てから、ふっと口許だけで笑う。
そしてちっとも笑っていない瞳であたしを見据えた。