恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
紫貴くんは目を逸らす事なくあたしを見ていた。
歪めた表情は元の無表情に戻ったけど……でも。
『―――なんで、何もされていないのに怖がらなくちゃならないの?』
『だから、』
『それに紫貴くん、怖がって欲しいなんて思ってない。
そんな寂しそうな、傷ついてるみたいな目をして言われたって、怖がれないよ』
驚きからか、またわずかに眉を潜めた紫貴くんがあたしを見る。
『ヴァンパイアだからって理由で、何もしてない紫貴くんを怖がらなくちゃいけないなんて間違ってる。
そんな理由で話しかけるな、なんて言われたって、絶対に従ったりしないんだから。
第一、紫貴くんは紫貴くんでしょ?
人種が違うくらい、なんでもないもん』
『人種って……』