恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『そんなの、猫と犬に仲良くするなって言ってるようなもんだよ!』
『……猫と犬は仲良くはないだろ』
『同じクラスの久美ちゃんの飼ってる猫と犬は仲良しだもん!
確かに、普通は仲良くないかもしれないけど、決め付けたりするのはよくないと思う』
『……』
『あたしが、紫貴くんを怖がらなくちゃいけないって決め付けるのもよくないよ。
“普通”なんて、おうちだとか国によって違うんだから。
あたしは、紫貴くんが怖くないもん。だから怖がらない』
強く言い切ると、紫貴くんは困ったようにあたしを見つめて。
そして、そのまま笑みを浮かべた。
まいった、とでも言いたそうな、そんな笑みを。
あたしが見た、初めての笑顔だった。