恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
あたしがこの時ヴァンパイアなんて言葉を受け入れられたのは、その意味がよく分かっていなかったからだったと思う。
じゃなきゃ、とてもじゃないけど受け入れられる事実じゃない。
よく分かっていなかったから、あんなにも簡単に受け入れられたんだ。
『紫貴くんはヴァンパイア』
一応頭には入っていたけど、あまり真剣に考えていなかった事実。
考えようとしなかった事。
だって、紫貴くんの生活は人間と変わりなかったし、ヴァンパイアだなんて思わせるような節は一度も見たことがなかったから。
だから、別に考えなくてもいいやって。
軽く思ってた。
だけど……、
『紫貴くんはヴァンパイア』って事は、それは事実で。
その事実は、成長と比例してどんどんあたしの中で大きくなっていって、無視できない存在になっていった。