恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
紫貴はあたしからその話題を出さない限り、『ヴァンパイア』なんて言葉を口にしない。
絶対に。
その考えに自信があった。
紫貴があたしを特別に見てくれてる事は、一緒にいる時間で痛いくらいに感じていたから。
あたしのどこか甘えた恋愛感情なんかとは比べられないくらいに想ってくれてる事が、紫貴の表情や態度から、たくさんたくさん、伝わってきてたから。
だから……。
あたしを怖がらせるような事は、絶対にしない。
そんな紫貴に、あたしは甘えてたんだ。
そんな自分を知っていたから。
紫貴を好きだって思う度に、向き合えていない現実が気持ちを阻んで重たくした。