恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『え、よく覚えてたね。……っていうか、クラスの子の名前とか覚えてないと思ってた』
クーラーの効いた室内は適度な温度になっていたけど、やっぱり紫貴の顔色は悪いままだった。
高い位置に上った太陽が照らす窓際の床が、黄色く染まっていた。
意外な発言をされて驚くと、紫貴は宿題の問題集に視線を落としたまま言う。
『おまえに嫌な思いさせたヤツは覚えてる。
小学校3年から5年まで、何かにつけてくるみに構ってた斉藤は、本当はくるみが好きだったらしいけど。
あと、中学1年の時、くるみのジャージを盗んだのは2組の峰だ。
峰もくるみが好きだった』
『……なんでそんなの知ってるの?』
すらすらと出てきた思い出話に驚く。
確かに紫貴が言ってる事件はあってるけど……。
でも、なんで好きだとか、犯人だとか知ってるの?