恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『紫貴が悪いんだよ。女のあたしから迫ってるのに、手を出そうとしないから。
据え膳、とか言うでしょ』
『……意味が違う』
顔を歪める紫貴を見上げているうちに、愛しさが胸を支配する。
気持ちのままに紫貴の胸へと飛び込むと、紫貴はあたしの背中と頭に手を回してくれた。
紫貴は、今まで何度も抱き締めてくれた。
その度にあたしは、紫貴に求められる事を望んでいたのかもしれない。
『いい加減、あたしを紫貴のモノにしてよ……。
紫貴が、好きなんだよ』
ぎゅっと抱きつきながら言うと、紫貴は困ったように笑った。
『どっちの意味で?』
『え?』
『俺のモノになりたいって言っただろ?
……どっちの意味で?』
『……両方』