恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
毎年、入梅前になると体調を崩す紫貴。
その年も例外じゃなくて、紫貴は熱を出してで寝込んだ。
看病したいのに、紫貴があたしを立ち入り禁止にしたせいで、あたしは自分の部屋の中をうろうろしていた。
看病ならおばさんがしてるし、風邪なら静かに寝かせてあげた方がいいのも分かってるけど、どうしても落ち着かなくて。
どうにかして部屋に忍び込んで、『ちょっと血吸えば楽になるでしょ?』なんて言ったらすごい睨まれて、追い出されちゃうし。
それでも、せめて何かしてあげたいって思いから、夜部屋を抜け出してコンビニに向かったのは18時。
空は、夏が近いせいでまだ少し明るくて、もこもこした雲が、空の7割を覆っていた。
アイスとゼリーだったらどっちがいいのかな、なんて思いながら歩いていた時、進む先に立つ男の人に気付いた。
高い身長と金髪の髪、グレイの瞳。
肩につきそうなほど伸びた髪が、よく似合っていた。
その人はにこりと微笑むと、まるで浮いてるんじゃないかってほど静かに、足音一つ立てずにあたしに近づいた。