恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『こんばんは。キミがくるみちゃん?』
『……あなたは?』
知らないのに素直に頷くには抵抗があって聞き返すと、男の人が笑う。
『ごめんごめん。こんな道端で急に言われたって警戒するよね。
俺は、藍川灰斗』
『藍川……?』
紫貴と同じ名字だった。
だけど、それだけでこの人が紫貴のお兄さんだって決めるのは早い……と思うのに。
持っている雰囲気だとかが、どこか紫貴と重なる。
じっと観察するように見つめていると、灰斗さんが笑う。
紫貴とは違って、人懐っこい笑顔だった。
『くるみちゃんの考えてる事、多分あたりだよ。紫貴は俺の弟。
って言っても、母親は違うから血は半分しか繋がってないけどね』
『え……』
『紫貴の母親は人間だけど、俺の母親はヴァンパイアなんだよ。
つまり俺は、王家の血を100%継いだヴァンパイアって事。
紫貴みたいにハーフじゃなくてね』