恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
いっそう表情を険しくした紫貴を見て、灰斗さんが笑う。
『安心してよ。別にくるみちゃんに何かしようとして来たわけじゃないし。
本当に用があったんだよ』
灰斗さんはずっとニコニコしながら話しているけど……。
一方の紫貴は、ずっと眉をしかめたまま。
警戒するように、灰斗さんの一挙一動に気を配っていた。
『まぁでも、顔も見れた事だし、帰るかな。
これ以上睨まれ続けるのも居心地が悪いし』
はは、と笑った灰斗さんがあたしを見る。
『じゃあね。くるみちゃん』
『……はい』
灰斗さんの後ろ姿が見えなくなるまで、紫貴はずっと睨み続けていた。
ずっと。