恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


いっそう表情を険しくした紫貴を見て、灰斗さんが笑う。


『安心してよ。別にくるみちゃんに何かしようとして来たわけじゃないし。

本当に用があったんだよ』


灰斗さんはずっとニコニコしながら話しているけど……。

一方の紫貴は、ずっと眉をしかめたまま。


警戒するように、灰斗さんの一挙一動に気を配っていた。


『まぁでも、顔も見れた事だし、帰るかな。

これ以上睨まれ続けるのも居心地が悪いし』


はは、と笑った灰斗さんがあたしを見る。


『じゃあね。くるみちゃん』

『……はい』


灰斗さんの後ろ姿が見えなくなるまで、紫貴はずっと睨み続けていた。

ずっと。





< 267 / 343 >

この作品をシェア

pagetop