恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『そう。父さんはそれを望んでいなかったけど。
王家の血筋を汚さないために、元帥達が勝手に決めた婚約者だった。
それが、灰斗の母親の美朱(みあか)だ』
『え……、じゃあ、灰斗さんと紫貴って、お母さんは違うって事……?』
さっき灰斗さんが言ってた事が本当なんだってびっくりして聞くと、紫貴は静かに頷く。
そして、話を続けた。
『父さんはずっと逆らってきたらしいけど、でも、美朱も元帥達も頑として聞かなかった。
元帥達は、王家の血を引き継ぐ子供を望んでたし、美朱は地位を望んでた。王家の地位を。
特に美朱はヴァンパイアの中でも激情的な一族の生まれで……。
欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れるようなタイプだった』
『なんか……、怖いね』
『ああ。それは父さんも同じように感じてたみたいだった。
だから、父さんが断わり続ければ、父さんの友人や親族……そして、母さんに危害が及ぶのも、きっと父さんは分かってたんだ。
それで……』
『灰斗さんができたの……?』