恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
言葉を詰まらせた紫貴。
無表情の横顔は変わらないけど、頷いたその顔が、どこか悲しく見えた。
『元帥達は、美朱との子供を作れば、それで納得する。
父さんは、母さんを本当に愛してたから、きっと苦渋の決断だったんだろうけど。
でも、母さんの身に危害が及ぶ事を何よりも恐れて、その選択を選んだんだろ』
淡々と静かに話す紫貴が見ていられなくて、立てた膝の上に置かれている手を握る。
それに気付いた紫貴は、手を握り返してくれた。
『元帥達や美朱と話し合って、子供を作る条件だけ飲んだんだ。
そして、子供が無事生まれたら、父さんに自由を与えるって交換条件で。
美朱が子供を生んで……、それを父さんが認知して。
美朱との婚姻関係はなかったけど、でも、子供を生んだ以上、美朱が望んでいた地位は与えられる。
王家の継承者の母親っていう、高い位の強い立場が。
……それで全部が丸く収まるハズだった』