恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『王家の血筋を引くヴァンパイアの母親としての自覚を持ってなかっただけの話だよ。
美朱は移り気の激しい女だったから、男をコロコロ変えていて、生活も荒れてた。
普通の生活じゃなかった。
それが、王家に入ったと同時にできなくなって、その事に苛立ってたらしい。
……王家に入るのがどういう事なのか、当たり前に予想できたと思うけど』
『……』
『欲ばかりを出して、浅はかな女だとしか思えない』
紫貴がわずかに眉を潜める。
たった少し崩した表情。
なのに、紫貴の横顔を見ていたら、つらさが溢れてきて喉の辺りを重くした。
そしてそれは、続いた紫貴の話を聞いた途端、一気に重さを増して身体の奥底へとゆっくりと沈んでいく。
『その苛立ちが、幸せに暮らしてる父さんと母さんに向けられた。
美朱は、母さんを殺すように命じたんだ。……兄貴に。
母さんが死んだのは、……10年前の今日だった』