恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『情緒不安定だから。
両親の死は、俺なりに受け入れてるつもりなんだ。
兄貴を許せないって気持ちは変わらないけど、だからってそこに縛られたままじゃ駄目だって事も分かってるから。
……でも、やっぱりこの日になると、色々と思い出されてきて、気持ちが不安定になる』
『不安定だと何か問題があるの?』
そんな事言ったら、あたしなんかしょっちゅうそんな感じなのに。
そう思って聞くと、紫貴は笑みを崩さないまま答える。
『万が一、くるみに襲い掛かったら困るだろ』
『……どっちの意味で?』
吸血衝動に駆られてなのか、それとも身体をって事なのか。
『どっちも』
『でも、今さら襲い掛かられても別に気にしないよ』
もうとっくにそういう関係なんだから。どっちも。
何を言ってるんだろ、なんて思いながら返事を待っていると、紫貴は眉を僅かに寄せて微笑んだ。