恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『それ、本気で言ってんの?』
『はい。本気ですけど……』
『俺が紫貴の両親にした事、知ってる?』
『……知ってます』
何の脈絡があるのか、分からないまま答える。
灰斗さんは、あたしが頷いたのを見てふっと笑った。
その笑みは、今まで浮かべていたヘラヘラしたものじゃない気がした。
何か、悪い事でも思いついたようなそんな笑み……。
『じゃあさ、俺が紫貴の周りうろちょろするのも嫌って事だよね』
答えに迷ったけど、嘘をついても仕方ない気がしてコクリと頷く。
紫貴が灰斗さんに向けた眼差しは今でも覚えてる。
灰斗さんの顔を見る度に、紫貴があんなにつらそうな顔をするなら。
できればもう灰斗さんには紫貴に会って欲しくないとすら思う。
紫貴の気持ちがいつか落ち着くのかは分からないけど、その時までは。