恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
【第十四章】
祐ちゃんと別れたのは、その日の夕方。
駅前で別れて、数メートル歩いた時、目の前に立つ人影に気付いた。
『気が変わったなら強制するつもりもないし、大人しく帰るけど。
どうする?』
首を傾げて聞く灰斗さんを、真っ直ぐに見る。
『変わりません。でも、賭けをするかどうかを決めるのは、内容を聞いてからです』
『んじゃ、場所を移そうか』
そう言って歩き出した灰斗さん。
その後ろを数歩遅れて歩く。
紫貴の待つ家とは違う方向。
今とっているあたしの行動を、紫貴はきっと反対する。
それが分かってるからこそ、何度も引き返したくなった。
だけど……。
後ろ髪を引かれながら、ぐっと歯を食いしばって灰斗さんの後ろ姿を見つめた。