恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
灰斗さんが足を止めたのは、古い洋館の前だった。
駅からそれほど遠くないこの洋館は、あたしも知っている建物だ。
小さい頃、お化け屋敷だって噂がたって度胸試しした事を覚えてる。
誰も住んでなくて、それなのに取り壊されない不思議な家。
薄暗くなった空が、余計に不気味に思わせる。
『ここね、ヴァンパイアの集まりで使うんだよ。
紫貴もヴァンパイアを取りまとめる身として、たまーに出かけたりするでしょ?
それ、ここに来てるんだよ』
『紫貴が?』
確かに、年に一度とかそんな頻度で紫貴が出かけるのは知ってた。
だけど、事情が事情なだけにどこに行くのかだとか、つっこんだ事は聞けないでいたけど……。
まさかお化け屋敷に来てただなんて。
ここにヴァンパイアが集まってただなんて。
……本当にお化け屋敷だったんだ、ここ。