恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
だけど……。
頭の中に、紫貴のつらそうに歪んだ顔が浮かんで、ぐっと顔を上げた。
あたしは、紫貴にもうあんな顔して欲しくない。
それが、あたしの中にある、一番大きい気持ち。
紫貴を想うのと同じくらいに、
“紫貴を守りたい”
そう思ってる。
守られるばかりじゃなくて、守りたいって。
きゅっと口を結んで門をくぐって、重たそうな扉の中に入った。
途端、真っ暗になった視界。
目を凝らしていると、ぼうっとした灯りが闇の中に浮かんだ。
最初ぼんやりとしていた灯りが、じょじょに明るくなる。
蛍光灯の半分ほどの明るさの中、スイッチから手を離した灰斗さんが微笑む。