恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


『暗いけど我慢してね。

あんまり目立っちゃまずいから、この明るさにしかならないように調節してあるんだ』

『そうなんですか……』


洋館の周りには高い塀があって、建物と塀の間には庭がある。

まるでこの建物だけを孤立させるように囲む庭だって結構な広さがあるから、目立つどころか、誰も覗けなさそうだけど。


高い塀。

広い庭。

たまに電気がついていても、人気を感じない薄暗い洋館。


そういうのが、お化け屋敷って噂が広がる原因だったのを思い出す。

まさか自分がそこに入るとは思ってもいなかったけど。


ひとつのドアを開けた灰斗さんが、その中に入る。

その後に続くと、赤い絨毯と何脚かの椅子が目を引いた。

30畳以上はあるんじゃないかってくらいに広い部屋にはそれ以外ないから当たり前だけど。



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