恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


『俺に血を吸われたって知れば、紫貴は俺を殺しにくると思うけど』

『紫貴に、灰斗さんを殺させたりしません。

紫貴に誰かを殺めた十字架なんか背負わせたくないから』

『くるみちゃんじゃ止められないよ』

『絶対に止めます。

“舌を噛むから”って脅してでも。

紫貴は、貴方を殺したりしたら、絶対に心に傷を負う。

……そんな事させない。もう、貴方に紫貴は苦しめさせない。絶対に』


キっと睨んだまま言うと、灰斗さんは不愉快そうに眉を潜めた。

そして、しばらくそうした後、吐き出すように話し出す。


『そういうの、うんざりする。紫貴紫貴って……。

―――いいよ、そこまで言うなら本当に賭けをしよう』


途中、少し黙った灰斗さんは、そう言って微笑んだ。



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