恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
―――もう、何度目だろう。
この夢を見るのは。
手を伸ばした瞬間、決まって目が覚めてしまうリアルな夢。
あたしに切なさだけを残す夢。
「……また涙、」
何かを伝えたがっているように頬を伝う涙。
体温よりも少し熱い涙は、目が覚めたあたしに、あの夢の存在を教えてるみたいだった。
忘れちゃいけないって。
あの夢を……、あの人を。
あの人は……、誰?
「……くるみ」
「……―――、」
聞こえてきた声に、反射的に手を伸ばした。
夢の中で何度も聞いた声。
この声の主に触れたくて―――……。
「……あれ? 藍川?」
伸ばした手が掴んだのは、藍川の腕。
意味が分からなくて思考が停止したあたしを、藍川は黙って見下ろしていた。