恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


『紫貴は、自分がヴァンパイアだって事に後ろめたさを感じてる。

だから、くるみちゃんが自分と関らずに幸せになれるなら、その道を選ぶのも悪くないって思ってるんだよ。

ただ、もう出会っちゃったからそれは無理だって思ってるだけで。

くるみちゃんだって、気付いてたでしょ』

『……』

『くるみちゃんを想うからこそ、“出会わなければよかった”とか思ってる。

紫貴は、自分を犠牲にしてでもくるみちゃんの幸せを守りたいハズだから。

あいつのそういうところ、ヴァンパイアらしくないよ。

ヴァンパイアは本能に従う生き物なのにさ』



気付いてた。

紫貴が、いつだって自分を責めてた事に。


ヴァンパイアだってバラさなければ。

もっと冷たく突き放せば。

距離を縮めなければ。

……あたしを、受け入れなければ。


紫貴がそんな風に思ってた事は知ってた。


だけど……、

それは、あたしを想ってくれるからこそだって事も知ってる。


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