恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『婚姻関係を結んだ時は、あの薔薇に男女の血を混ぜたものを与える。
ま、そんなの昔のヴァンパイア界での儀式だけどね。
あれ一本だけじゃなくて、同じ役割を持つ薔薇は必要とされる場所に根付いてるんだ』
男女の血をって……。
人間で言う、結納だとか、指輪の交換だとかみたいなものなのかな。
あの薔薇は、教会とか神父さん代わり?
……だとしても、なんか恐ろしすぎる儀式だけど。
『もちろん、今はそんな事してるヴァンパイア少ないけど。
人間との関りを持つにつれて、ヴァンパイア界での儀式だとかは軽視されてきてるし、元帥達もそこは仕方ないと見てるみたいだし。
だけどね、今でもあの薔薇は役立ってるんだ。
あの薔薇に誓った約束は、絶対になるから』
『どういう意味ですか?』
『あの薔薇の前で誓った約束は敗れないんだ。
……言い方を変えると、約束を破った場合、そいつは消滅する。
破った時が、死ぬ時って事』
『死ぬって……』
あまりに急に出てきた“死”って言葉に、驚いて聞く。