恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『ヴァンパイアの場合は、砂になって消滅する。
人間の場合は……、まだ試した事がないから分からないけど、まぁ、死ぬのは確実だね。
つまり、命を賭けての誓いってわけ。
人間からすれば不思議かもしれないけど、でも本当。
まぁ、一種の魔力みたいなものが働いてるんだよね』
灰斗さんは、おもむろに窓を開けてそのまま外に出る。
ポツポツと降り出した雨が、灰斗さんの髪を濡らしてる。
だけど、それを気にするでもなく、灰斗さんは足を進めて薔薇の前で立ち止まった。
『俺、藍川灰斗は、桃井くるみの記憶を消す以外、一切手は出さない事を誓う』
そう言った灰斗さんが、薔薇の棘で指先を切って、そこから流れた血を薔薇に落とす。
思わず声をかけそうになったけど……、それを止めたのは、“真紅の薔薇”だった。
灰斗さんの血が落ちた瞬間だけ、本当に真紅の色に染まった薔薇。
だけどそれはほんの一瞬で……、
あっという間に、薔薇は元の赤黒い色に姿を戻していた。
驚いて声も出せずにいると振り向いた灰斗さんが、にこっと笑う。