恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


『契約成立』

『今、何を……?』


目の前で起こった事に頭がついていかなくて聞く。

灰斗さんは小さく首を傾げた。


『心配しなくても、あの薔薇には証人になってもらうだけだよ』

『証人って……、賭けのですか?』

『そう。

記憶を消すのは、俺がくるみちゃんの血を吸って記憶操作を行えばいいだけの話。

だけど、それじゃ俺がくるみちゃんの血を飲み干して殺しちゃう可能性もなくはない』

『……』

『実際、そうしたところでくるみちゃんは何もできない。

だから、あらかじめ、この薔薇に誓いを立てておくよ。

桃井くるみの記憶を消す以外、手は出さないって。

そうすれば安心でしょ?』


微笑まれたけど、素直に頷くことができなかった。


あの薔薇の誓いを信じるとしたら。

確かに記憶を抜かれている最中に何かされるっていう不安はなくなる。



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