恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
だけど、それ以前にあたしはそんな心配してなかった。
灰斗さんを全面的に信じてるなんて事ないけど、そこまで卑怯な人でもない気がしていたから。
そして、そんなあたしの気持ちを、灰斗さんはきっと気付いてた。
探るようにあたしの目を見つめてくる人だって、初めて会った時からずっと感じてたし、
自分が疑われているかどうかって事は、ヴァンパイアの優れた感覚を使えば察知できるような気がするから。
だったら……。
『そんなの、言わないで殺せばいいのに、なんでわざわざそんな事……』
呟くように聞くと、灰斗さんは目を伏せてから答える。
悲しそうにも見える微笑みを浮かべて、やっと聞こえるような声で。
『……見たいんだよ。
もう一度……、一途な想いを―――……』
雨が降り出した空。
目の前には……、今からあたしの首に咬み付こうとしている灰斗さん。