恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


紫貴はどう思うだろう。


紫貴は……、悲しむのかな。


心臓がドクドク静かに動く中、そんな事を考えた。


ゆっくりとあたしに手をかける灰斗さんの動きが、スローモーションに見えた。


ごめん。

ごめんね、紫貴……。


だけど、大丈夫だから。

大丈夫だから、……絶対。



『……―――っ』


どんよりとした重たい空の下で、灰斗さんの牙があたしを刺した。


稲光が窓ガラスに反射して、あたしの姿を映し出す。

紫貴以外に牙を立てられているあたしを。


気持ちが悪い。

呼吸が浅くなって、意識が遠のいていく。





< 309 / 343 >

この作品をシェア

pagetop