恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
紫貴はどう思うだろう。
紫貴は……、悲しむのかな。
心臓がドクドク静かに動く中、そんな事を考えた。
ゆっくりとあたしに手をかける灰斗さんの動きが、スローモーションに見えた。
ごめん。
ごめんね、紫貴……。
だけど、大丈夫だから。
大丈夫だから、……絶対。
『……―――っ』
どんよりとした重たい空の下で、灰斗さんの牙があたしを刺した。
稲光が窓ガラスに反射して、あたしの姿を映し出す。
紫貴以外に牙を立てられているあたしを。
気持ちが悪い。
呼吸が浅くなって、意識が遠のいていく。