恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
【第十五話】
―――あの人は、紫貴だ。
記憶を無くしている間、ずっと、自分の中の何かが欠けてる気がしてた。
けど、そんなの当たり前だ。
だって、一番大切な人との記憶を忘れていたんだから。
こんなにも大切な記憶を。
「―――……っ」
勢いよく身体を起こして、周りを見渡す。
視界には自分の部屋が映って、そこで初めてベッドの上にいる事に気がついた。
「……くるみ?」
そして……。
声がした方を咄嗟に振り向く。
あたしはベッドの上で上半身だけ起こした体勢で、ベッドに腰かけるように紫貴が座っていた。
紫貴の不安そうな表情を見るなり、目の奥に熱い涙がたまり出す。
本当に思い出せたんだって、身体の奥からじわじわ熱くなる。
「紫貴……、」
そう呼ぶと、ますます紫貴は眉を潜めて不安をあらわにした。
そして、聞く。
「記憶が戻ったのか……?」