恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
“紫貴”
そう呼ぶのがすごく久しぶりに感じた。
すごく特別な呼び方に感じた。
「紫貴……」
紫貴が泣きそうな顔をするから、溜まった涙が溢れ出して頬を伝う。
カーテンが閉められている暗い部屋には、ベッドサイドにある小さなライトだけがつけられていた。
時間が分からないけど、気にもならなかった。
そんな事気にしてる余裕なんかないほどに、紫貴しか見えなかった。
心細くて仕方ないっていうような顔をする紫貴に、やっとの思いで微笑んで見せる。
「戻らなくたって、あたしが好きなんでしょ……?」
まだ記憶が戻ったって確信が持てなくて、不安そうにしている紫貴に言う。