恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


また一筋、涙が頬を流れる。

温かく熱を持った涙を、紫貴の指先が拭って、そのまま頬に触れた。


触れられた場所から、涙よりも温かい気持ちが伝わってくるみたいだった。


じっと見つめる先で、紫貴が優しく細めた瞳であたしを捕らえる。

そして「本当に適わない」って微笑んだ後、言った。


「俺はくるみを誰よりも大切に想ってる。

自分の人生をかけてまでして頼まれた事を、断われるハズがない。

……俺は、一生くるみの隣にいるよ」



「そこまでして俺を望んでくれてありがとう」

そう言った紫貴が、あたしを抱き締める。


包まれる紫貴の香りに、胸がきゅっと締め付けられた。



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